・入学手順
ここではポイントに絞ってご紹介します。
➀ 書類選考と面接の2段階
➁ 書類選考はすべてオンライン。日本にいながらすべてできる。
必要書類はTOEFL、GRE(大学院生用のセンター試験的なもの、TOEFLの100
倍難しい、2度と受けたくない)、CV(履歴書)、英訳の大学の成績表と卒業証書、
3通以上の推薦状、PS(statement of purpose 意気込みを語る熱い手紙)
➂ 面接もスカイプでできる。(アメリカ在住なら大学負担でお呼ばれされますが、日本在住だったからか、私はスカイプ面接でした)
④ だいたい11月〜12月くらいで応募しめきり、1月〜2月くらに面接、2月終わりくらいから合格通知、3月くらいから繰り上げ合格通知、4月15日までに行きたい進路を決定する
簡単にご紹介しましたが、基本は日本にいてもできるよ!というのがポイントです。
・なぜUniversity of Kentucky(UK)?
University of Kentucky(UK) にしたのは、単純に金銭面での待遇がよかったからです。
そもそも、どこにいってもきっと楽しいし学びはあると思っていました。なので、決め手は
金銭面での負担が少ないところでした。
UKのいいころ
➀ 授業料が卒業までタダ!
➁ scholarshipがついてきた!
➂ 物価、賃料が安い!(ボストンやらNYやらシカゴはエグいらしい)
④ 治安がいい!
⑤ 田舎なので誘惑が少ない!自然が多い!馬、牛、リスの楽園!
➅ 田舎だから余裕があるのか人が基本的に親切!
というところで、今の所UKで大満足です。
・カリキュラム〜卒業に必要な過程〜
ここでは、さまざまなポイントで退学というトラップが学生を待ち受けています。
まず、各学期の総合成績をB以上(A、B、C、D、Eの五段階評価)にしないと退学です(強制送還ともいいます)
次に、在学2年以内に36単位の授業を修了し、自分でdissertation committee に入ってくれる教授たちを召還してはじめてPhD Candidateになる試験を受けられるのですが、これに受からなければ退学(強制送還)です。
そもそもPhD candidateとはPhD候補生。入学しただけでは候補生ですらなく、ただの学生。候補生になる試験をパスしてようやっとPhDにふさわしいかどうか審査される対象になるのです。
さらに、ようやっとPhD Candidate になっても研究成果をあげて論文書いて、最終的にdissertation defenseを通らなければ卒業できません。
と、わたしの知っている日本の制度とはえらい違いです。アメリカの大学院は学部によって修了単位数は違いますが、概ねこのような流れが一般的だそうです。
授業ではPCRやウエスタンブロット、マススペクトミーなど実験で使われる実験手順の原理や生化学、遺伝学、統計学、栄養学など基礎・応用・発展を学ぶ授業(基礎と言っても大学院生レベルなどで進むのでスピードがはやいことはやいこと半端ない)をやります。気分的にはハリーポッターです。遺伝学とか栄養学といっているとハリーポッターな感じになります。
来学期からは栄養学の詳しいやつを学ぶそうです(現時点ではわたしも全く見当がつきません)
さらに、試験もあります。1ヶ月に1回各授業で中間試験があり期末試験もあります。だいたい筆記試験です。当たり前ですが、授業も筆記も英語でたじたじです。予備知識がない実験の理論を英語で学ぶというのは思った以上に苦痛でした。すべての専門用語が新出英単語なので、予習・復習が欠かせません。医学部の時にやったであろう生化学など基礎はもうアラサーの頭にはのこっておらず(そもそも入っていなかったと思います)、仮に残っていたとして英語ではいわれちゃあお手上げです。
周りが24歳前後の中一人アラサーが混じっているのも滑稽な図ですが、アジア人は比較的若く見られるので、今の所違和感なく溶け込めているはずです(周りが早熟で、私が未熟という指摘もあります)
また、Journal club という抄読会や外部講師を招いてのセミナーおよび学生の研究発表が毎週あり、定期的に何かしらの形で発表する機会がきます。発表は長いもので1時間あり、アホほど容赦ない質問がきます。ここでの質疑応答のスマートさというのも要求されます。
授業や発表以外ではproposal といってgrant(研究費)をもらうための申請書を書く訓練をしたり、論文をかいてみたり、実験計画を立ててみたりといろいろやることがあるような気がします。ただ、周りの優秀な学生はさらりとやってのけるので要領がいいのだと思います。これは、実績としてCVにのり、将来の就職活動に影響するのでみんな頑張っています。
・ポスドクとの違い
こんなに手間をかけるならポスドク留学でよくない?
確かに多くの日本人研究者は日本で学位をとってポスドク(ポストドクター)として留学され、素晴らしい業績を残しています。
なので、個人的に考察したポスドクのメリット・デメリットをご紹介します。
ポスドクのメリット
・授業がないので自分の研究に集中できる
ポスドクのデメリット
・日本でPhDとってからでないと留学できないはず
・もしPhDをもってないとテクニシャン扱いになる可能性もあり身分が保証されない
・いつでも首を切られる可能性もあり
(日本からお給料もらえるならこの心配はありませんが)
つまり、ある程度一通り自分で研究ができる人ならポスドクからの方が逆にいいのかもしれません。ただ、わたしは現時点で研究ひとりではできない上に、せっかちなので日本の大学院を修了するまでなんて待てない!!!と思い、きちゃいました。どっちがいいかは個人の価値観だと思います。
・PhDとMasterの違い、日米の違い
よく本屋で話題になっているMBA保持者が語るアメリカ大学院的な話は、日本でいうところの修士、つまりマスターなのです。実は大学院受験を志した時は、その違いもよくわかっていませんでした。修士は基本的には2年以内でとるように設計されたコースです。だからといってPhDより簡単!なんてことはまったくなく、エグいくらい宿題もでるし、ハードな2年となっています。
修士(master)と博士(PhD)の違いは自分で研究をするかどうかの違いです。つまり、将来何をしたいかによります。自分でラボを運営するとかなら、PhDは必須です。
ラボ運営を目的としない人たちがなぜmasterやPhDにいくかというとアメリカでは4年制大学を出ただけでは就職活動の際にいい仕事につけない(起業は別)という事情もあり、修士課程か博士課程に行く傾向が強いからというのが挙げられます。
例えば、アメリカでは、栄養士さんになりたいからマスター行って資格取る、理学療法士になりたいからマスター行って資格取るというのはよくある話です。
また、企業も修士や博士をもっている学生を非常に優遇し、いいお給料を提示するそうです。PhDはマスターと比べより特定の分野に関しての深い知識と技術をもっているというのが特徴で、そこが企業の募集とマッチすれば高額の報酬をもらえるそうです(製薬業界など) ちなみに、社会的にもPhDホルダーだと尊敬を受けるそうです。
(日本は全く逆とききました。日本では逆に博士持ってると企業から使いにくい、年をとっているなどといって採用率が低いそうです。ですので、日本の博士たちは教授になれる一握りを除いて万年助教のリスクがあると伺いました)
・総括
あまり知られていないアメリカ大学院をざっくりとまとめてみました。
読みづらい点、わかりづらい点など多々あると思いますので、ご質問・コメント大歓迎です。
Misa.Ito@uky.eduにいつでもご連絡いただければと思います。
みなさまのご参考となれば幸いです。
学生フットボール
UKはバスケがめちゃくちゃ強いと評判ですがフットボールの評判はイマイチです。それでも多くのUKファンが詰めかけます。ブルーはUKカラーなので客席はブルーです。
参考までに。今度の生化学の過去問の一部です。ただただ、つらい。
3件のコメント
初めまして。ニュージーランドの月岡祐介と申します。私はイギリスで公衆衛生の修士課程をしましたが、とても辛いものでした。いつもグーグルで「大学院留学 辛い 楽しくなる 方法」などと検索していました。色々と大変だと思いますが、身体に気を付けて邁進されて下さい。
同じアラサーとして脱帽です。私もERに感銘を受け医師となりました。PhDは日本でとったので現在ドイツで周りが火を吹きながらドクター論文を書いているのを見ると、本当に同等と言えるのかと申し訳ないところです。外国で外国語での勉学は自分の決意とはいえ文句も言えずしんどいかと思いますが、頑張ってください。応援してます。
暖かい励ましをありがとうございます!ドイツで活躍されている先生に激励いただき非常に元気がみなぎりました!ありがとうございます!